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  • 執筆者の写真VOICTION

24/5/11 「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(案)」パブリックコメント提出

更新日:5月13日


公正取引委員会及び厚生労働省より募集がありました、

『「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(案)」等に関する意見募集について』

に対して、VOICTIONより提出したパブリックコメントを公開いたします。


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提出意見:


 インボイス制度を憂慮する声優の有志チーム VOICTION(ボイクション)では、今回の意見募集のうち「【別紙5】特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方(案)について」の中でも、特に「第2部ー第2ー2(2)イ」について意見を提出いたします。


 今回の意見を提出するにあたって、以下、特定業務委託事業者を「声優事務所」、特定受託事業者を「声優」と書かせていただきます。声優事務所に所属していない声優も多数存在しますが、今回は声優事務所に所属している声優の状況を中心に意見を述べたいと思います。


 インボイス制度導入前にVOICTIONで行った実態調査によれば、声優(および事務所に所属していないフリー声優)の90%以上が消費税免税事業者であることが分かりました。そして令和5年10月1日にインボイス制度が導入された際に、大多数の声優が「免税事業者であることを理由に」業務委託時に定めた報酬の額を、基本的にマネジメント料を引き上げる形を経由して、半ば強制的に減額させられました。減額された報酬の額は、消費税・地方消費税額相当分まるごとであったり(これは独占禁止法違反ではありますが)、経過措置により仕入税額控除ができない分だけであったり、場合によっては消費税・地方消費税額相当分まるごとではないが経過措置により仕入税額控除ができない分は超えている額であったりと様々です。こういったことが声優業界全体で起こったのだということを、ご理解いただければと思います。


 今回の資料では「報酬の額を減ずること」の具体例の中に「消費税・地方消費税相当分を支払わないこと」が含まれています。そして声優に帰責事由が無ければ報酬を減額してはいけないとされており、この帰責事由の中に「声優が免税事業者であること」は含まれていないと読み取れます。


 インボイス制度導入をきっかけに、なぜ声優事務所が免税事業者の声優の報酬を減額したのかといえば「あなたが免税事業者だと消費税の仕入税額控除ができなくなる分があって、それをこちらが負担するのはきついので、あなたが負担してください」という言い分がありました。


 しかし、今回の資料では、声優が免税事業者であることが原因で声優事務所に消費税の仕入税額控除ができない分が生じるとしても、それを「声優の帰責事由」として報酬を減額することは本法違反となると読み取れます。


 今回の資料における「報酬の額を減ずることの具体例」では、単に「消費税・ 地方消費税相当分」としていますが、これは経過措置期間内で「消費税・地方消費税相当分のうち、仕入税額控除が認められない分のみの減額」も該当すると解釈できます。


 なぜなら本法が作られる趣旨は、声優をはじめとする「フリーランスの保護」なのですから、その趣旨を重視するのであれば、本法は立場の弱いフリーランスを保護できるよう、柔軟に幅広く適用されるべきであると考えられます。その趣旨からも、経過措置期間内の「消費税・地方消費税相当分のうち、仕入税額控除が認められない分のみの減額」は、声優に帰責事由が無いとして本法違反とするのが妥当だと解釈できます。


 さらに、インボイス制度の経過措置期間は3年刻みとなっており、消費税・地方消費税相当分のうち仕入税額控除できない割合が段階的に引き上げられる形になっています。もし本法の「消費税・地方消費税相当分」に「仕入税額控除が認められない分のみの減額」は含まれない、となるのであれば、経過措置期間にあわせて段階的に報酬を減額する場合、令和11年9月30日までは本法違反ではな く、経過措置が適用されない令和11年10月1日からはいきなり本法違反となってしまい、とても違和感があります。それに、「消費税・地方消費税相当分の減額」は本法違反で「仕入税額控除が認められない分のみの減額」は本法違反とならないのであれば「消費税・地方消費税相当分まるごとの報酬減額は違反だけど、うち一部の報酬減額なら違反にはならない」を認めているようなものですか ら、「令和11年10月1日以降は消費税10%をまるごと減額すると違反になるから、8%や9%の減額だけにしておこう」といった抜け道を許すことになるのではないかと思います。


 以上をふまえて、本法は声優を全面的に保護する内容となっており、声優事務所との契約は単発ではなく継続的なものであることから、本法が始まった場合にはこれらの報酬の減額はさかのぼって見直す必要が出てくるのではないかと考えています。


 また、報酬の減額は声優事務所のマネジメント料の引き上げという形で行われていますが、インボイス制度導入前に通常「免税事業者の所属者の皆さまへ」といった通知が送られており、また報酬明細を見れば制度導入前と後で差し引かれるマネジメント料の割合が引き上げられていることは明白であることから、マネジメント料の引き上げという形であっても、通知と報酬明細をもって総合的に本法の報酬の減額に該当すると判断することが妥当であると考えます。


 しかし、声優の立場は非常に弱く、特に新人のうちに声優事務所に意見することはとても難しいことです。また、本法が始まっても、このような報酬の減額が違反となることをそもそもみんな知らないという状況が予想されます。私たちVOICTIONからも周知をしたいとは思っていますが、ぜひ広く周知をお願いしま す。


 最後に、本法の資料を拝見して率直に感じたことを述べたいと思います。


 インボイス制度導入により声優と声優事務所が報酬の減額の話し合いのせいでわだかまりが生まれて、折り合いがつかずに声優事務所を辞めるしかなかった場合も多く見られます。なぜ、本法が始まるまで、インボイス制度を少なくとも延期することをもっとよく検討しなかったのか、非常に悔しい気持ちです。順番が違えば、報酬の減額→見直しなどという、信頼関係を破壊する余計なやり取りは不要だったはずなのです。


 私たちVOICTIONはインボイス制度で影響を受ける声優の保護はもちろん、声優業界全体を守りたいと考えています。本法が始まれば保護される声優が増える一方で、声優事務所は契約の見直しのための事務負担を強いられ、さらに消費税の負担が増えることとなります。もしかしたら小さな事務所は経営的に耐えられず廃業となり、結果的に所属している声優もともに仕事が無くなってしまうおそれもあります。そうなっては元も子もありません。


 今回は本法に対しての意見募集ですので、本法を始めるにあたって私たち VOICTIONからのお願いとしましては、行政は「横」で連携し、本法をもってインボイス制度で負担を強いられる声優事務所をはじめとする特定業務委託事業者も、どのように保護するのかをきちんと示していただきたいということです。特定業務委託事業者も、特定受託事業者も、一方のみが負担を強いられる結果とならないよう、現場の意見をよく聞き、なにとぞ慎重に配慮をしていただくよう求めます。

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